「日記」読みやすい本を目指して

今回出版していただいた本は、分厚い!

本を手にとってくれた人から、ちらほらと、「重い、ボリューミー、分厚い」という声が届く。

10年分の思いがつまっているから、字数が多くなっているのもある。今回の字数であれば、300ページで収まるはずが、70ページ増えて370ページになった。

これには理由がある。私には文字の読みにくさがある。私の読みにくさは、文字が平面に見えないこと。文章を見ると、凸凹して、重なって見えてしまう。似た形の文字があると、読めなくなること。全く読めない訳ではないけど、読むのに時間がかかる。

ミネルヴァ書房さんがそのことに耳を傾けてくれて、「せっかく書いてくれたのに、Ajuさん自身が読みにくいと思う本を作るのはやめましょう。他にも読みにくく感じている方たちがこれなら読めるかもしれないと思って、手にしていただけるような本を一緒に作りましょう」
と言ってくれた。

行間を変えた文章を編集者さんがいくつも用意してくれて、その中からどれが読みやすいか選ばせてもらった。私は1番広い行間を選んだ。行間が広くなると、近くの行との文字の重なりが少なくなって、うん!行間が狭いものに比べて読みやすくなる。1ページに入れた行数は、当初予定していた「20行」から「18行」に。1行に入れる文字も重なりが少なくなるように「52文字」から「49文字」へと変更してもらった。

行間が広いと、文字が読みやすくなる。
読んでいる行を見失わないための「リーディングルーラー」も多くの本は2行分が入ってくるけど、これは1行だけが見えるので、読みやすい。

文字のフォントも、同じようにいくつもの候補を用意してもらった中から、読みやすい字を選ばせてもらった。本文では「リュウミン」という書体が使われることが多いそうだ。明朝体の文字は、漢字が大きくて、ひらがなが小さくなっているものが多い。その大きさの違いが凸凹に見え、読みにくさにつながっていることを話すと、「黎ミン」というフォントを教えてくれた。「黎ミンPr-6」という書体なら読んでいる時のストレスがうんと少なくなる。

文字の太さが極端に変わっていなかったのも良かった。多くの明朝体は「とめ」「はらい」で太くなっている部分が強調されて、チカチカして読みにくく感じてしまうから。

もうひとつ、ひと文字・ひと文字の余白が大きく、文字の形が分かりやすかったこと。行間が広くなったこともあいまって、似た形をしている文字が出てきても、何と読むのか分からなくて止まってしまう回数も少なかったから。 ※似た形「い・こ」「ろ・る」「し・つ・と・も・や・ら・を」など。

見出しの文字は、「ヒラギノUD角ゴStd」を選んだ。これは読みやすさを追求した書体だったようで、UDフォントはユニバーサルデザインフォントと呼ばれていて、誰もが読みやすいフォントを目指して作られたそうだ。

明朝体なのに、
漢字とひらがなの大きさにあまり差がない。
「とめ」「はらい」で太くなる線があまり目立たない。

こうやって、長い時間をかけて、読みやすい文字と文字の間隔、行と行の間隔、文字のフォント・レイアウトを考えていった。

実は、本ができるまで、読みやすい本になるようにと、こんなふうに、たくさんの時間を割いてもらっていた。

だから、分厚い、重たいという言葉だけでは悲しい気持ちがした。そう思って今日これについて書こうと思った。読みにくい人のために少しでも読みやすくなればいいなという優しさも詰まっているんだ。その優しさの分だけ、少し重たくなったことを知ってもらいたいと思った。

もし、この本を読んでくださった中で、誰かにおすすめしたいと思ってくださっている方がいらっしゃいましたら、本の感想と一緒に「分厚いでしょ。でもね、この分厚いのには理由があってね…」と優しさの重さのこと、お伝えください。

参考 「黎ミンPr-6」  https://www.morisawa.co.jp/fonts/specimen/1536

「ヒラギノUD角ゴStd」 https://www.morisawa.co.jp/fonts/specimen/1794

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