「日記」忘れない

物理の先生との思い出と言えば、ラーメン屋さん。
先生には、物理の勉強でお世話になったというよりも、障がいの診断を受けてから、学校で特性に合わせた授業が受けられるように率先して支援体制を整えてくれた人だ。大学を辞めずにいられたのも先生のおかげだ。

落ち込んだり、迷惑ばかりかけることもいっぱいあったけど、いつもこう言ってくれる。
「よし、飯でも食いに行くか」
決まって、ラーメン屋さんだ。にんにくラーメンの日もあれば、塩ラーメンの日もある。それもいつの間にか、決まったラーメン屋さんになった。そこで何か話すわけでもない。ひたすら麺をすすり、スープを飲む。不思議だけど、食べ終えると少し元気になっている。

時々、あの日々のことを思い出す。今、絵を描けている嬉しい気持ちが、大変だった日々を忘れさせてしまうんじゃないかと思う時がある。突然怖くなる時がある。
自分が嬉しい気持ちを持つことはすごく大切だけど、辛かった自分のことも大切にしていたい。しんどい時に、そばにいてくれる人がいたから、今の自分があること。
辛く傷ついた心を忘れるということは、そばにいてくれた人を忘れることになってしまう。

阪神淡路大震災から27年が経って、灯籠の文字は「忘」だった。
私も絶対忘れない。


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