一人で初めてのお店に入るのが苦手だ。
幼少期の頃に比べれば、色々な場所に緊張しなくなってきたと思う。
同じ教室でも、行事があって教室に飾り付けがされると、異空間と思って入れなくなった。
体育館が運動以外の色々な催しに使われて、様子が変わると、ひどく動揺した。
何か同じものがないかと、窓の数やロッカーの数を数えたり、タイルの線に両足を揃えて1から10まで数字を数えて自分がいなくならないと言い聞かせなければ不安が収まらなかった。
変わっていないところを探さないと自分の感覚がなくなってしまうようだった。
新しい空間に入ろうとすると、今もまだ緊張する。
初めてのお店は、お店の様子も人も音も照明も香りもメニューも、たくさんの新しいことが待っているから、なかなか入ることができない。
東海道を歩いた時も、旅行に出かける時も、知らないお店に入るよりも、チェーン店やコンビニで同じお惣菜やおにぎり、飲み物があるほうが安心して食べられた。
せっかくだから、ご当地のものを食べておいでよと言われても、安心する「同じ食べ物」を選んだ。
今は以前より成長して、チェーン店のスーパーでご当地の食べ物を探して食べる楽しみができた。
一人だとなかなか入れないけど、友だちに誘ってもらって新しいお店に一緒に入ると、緊張はうんと減る。一緒にいると自分がなくなる感じがしなくなる。色々話してくれるから、新しい人や音、光、香りに吸い込まれそうにはならない。
そんな友だちに連れて行ってもらったカレー屋さんがとても美味しくて、カレーが大好きなった。
スパイスの香りにびっくり。
こんな食欲がそそられる香りがあるのかと驚いた。
あちこちのカレー屋さんを食べ歩くその友だちから、これだけあればだいたいのカレーが作れる、とおすそ分けしてもらったスパイスがまだ残っていたので、先日作ってみた。
ポークカレーとえびのココナッツカレー。
カレーはあいがけが美味しいよ!と教えてもらったから、カレーを作るときは2種類作ると決めている。
初めてのお店に、ちょっと一歩を踏み出すと、世界が広くなることを知ったのに、まだ一人で入れないのが自分でももどかしい。